3カ月留学生のその後の活動
3ヶ月間留学に参加してきた5人の生徒が、その活動を機に新しいプロジェクトを立ち上げて活動をしています。ここにその紹介を掲載します。
NZの提携校(Waikato Diocesan School for Girls)にこの夏3ヶ月間留学してきた私たち5人は、SSHの探究の一貫でFAO(国連食糧農業機関)の本部が作成した子ども向けの教材を日本語に訳したことをきっかけに、「世界の食料廃棄の現状を1人でも多くの人に知ってもらい、Food Lossを減らそう!」というプロジェクトを進めています。
今現在、世界全体で年間約13億トン、生産されている食べ物の約3分の1がゴミとして廃棄されているのを知っていますか? これは一人当たり1年間で約190kgの食糧を無駄にしている計算になります。気候変動の重大さが若者に浸透しつつある中、Food Lossも大変深刻な問題のひとつとして注目されているのです。
廃棄された食べ物をそのまま燃やしてしまうと、温室効果ガスの一つであるメタンが発生しますが、これは世界が協力して排出量を減らそうとしているCO2の28倍強く、CO2以上に地球温暖化を促進します。また、食糧を生産し、食品として製造、加工、貯蔵及び輸送する際にも大量のエネルギーを使うため、発生するFood Lossにかけられたエネルギーは年間3.6ギガトンにも及びます。水についても、食糧生産に使われるうちの4分の1も浪費されており、その一方で近年の気候変動によって地球上の多くの場所で水不足や干ばつなどが問題となっています。
世界的には人口が増えていて、十分な食糧を得られない貧困問題も存在します。
Food Lossを解決することは、地球温暖化の防止と同時に、貧困問題を解決することにもつながります。この地球を守るために、そして世界中の人たちにこの地球上の食糧が充分に行きわたるように、私たちはFood Lossを生まないようにしていかなければいけない。知れば知るほど、その思いは強くなっています。
私たちがこれまでやってきたことは次の通りです。
まず、留学前にNZ大使館に伺い、NZは農業立国であるために環境に対する意識が非常に高いことを詳しく教えて頂きました。そこで私たちは、Food Lossの問題解決のヒントがNZで得られるはずだと確信し、大使館で頂いた情報を元に、留学中、現地の慈善団体のボランティアに参加したり、地元のスーパーなどを視察したり、留学先の全生徒と先生方を対象にしたFood Lossに関するアンケートや、食堂長の方にもインタビューを行なうなど、様々なアクションを通じて多くのことが発見できました。
帰国後は、国連大学で開催された世界食料デーイベントに参加し、FAO親善大使の国谷裕子さんのお話などを伺いました。また、FAO駐日連絡事務所のチャールズ・ボリコ所長ともお話をさせて頂き、その後に事務所も訪問し、私たちが体験してきたレポートを聞いてもらったり、今後のアクションについてのアドバイスを頂きました。ボリコ所長からは「自分たちが持っている知識を、出来るだけ多くの人に共有しなさい」と言われました。
こうした体験から得られたものを日本でもっと多くの人に共有したいという思いから、私たちは第一弾として身近なところからスタートします。
1月に、お料理レシピサイト「クックパッド」さんにご協力頂き、クックパッド本社の素敵なキッチンスタジオをお借りして、校内生徒を対象にしたクッキングバトルを行います。消費期限が迫った食材や冷蔵庫に残った余り物を活用し、どれだけ美味しいものが作れるかをチームで競います。廃棄する食材を計量し、どれだけ無駄なく料理ができるかも重要なポイントです。審査員にはクックパッドの方と、校長先生をはじめ、学校の先生方にも参加して頂くことになっています。そこでは私たちが得たFood Lossに関する知識をシェアする機会にもしたいと思っています。
NZには、形の悪い野菜や果物、パッケージが壊れたり、賞味期限が迫った食材を、無駄なく流通させるさまざまな仕組みがありました。
日本にもフードバンクがありますが、事前に手続きなどが必要で利用できる人が限られていて、どんな人でも使えるというわけではありません。食べ残しを持ち帰ったり、売れ残ったものを無料で配ることなどは、最近は一部で始まっているところもあるようですが、他国に比べて日本は衛生面での規制が厳しいのが現状です。
クッキングバトルをきっかけに、まずは学校の中でFood Lossの問題を知ってもらい、この社会的問題に意識を高めるきっかけにしたいです。そしてもっと広く、私たちの同世代にも訴えていけるように、次のアクションもどんどん企画して、ここでまた紹介していきたいと思います。